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日本ダービー |
[ ☆レース回顧 ] |
|| K 09/06/01 (月)20:12
昔から競馬界に伝わる格言に「ダービーは運の強い馬が勝つ」という格言がある。出走頭数が20台後半、「ダービーポジション」という表現もあった時代に囁かれたものだが、出走頭数が18頭に制限された現代において、その格言は露と消えたかのうように思われた。しかし、競馬界においては一定の傾向が続き、皆がそれに気づくと途端にその傾向が潰える事はよくある。実力馬が実力通りに勝つ近年のダービーの傾向は、今年においては全く通用しなかった。 当日に降り続いた雨はあっという間に馬場を不良馬場に変え、これまでの府中の内枠、先行馬有利の傾向を更に酷くしてしまった。むらさき賞では1,2,3枠の馬で決まってしまう有様、この時点で内枠、先行馬狙いに馬券を変えたファンも多かったのではないか。 レースは逃げ宣言していたリーチザクラウンを制してジョーカプチーノが逃げる展開。しかし、スプリント重賞を制した馬が2400mを気分良く走れるということはそうそう無い。名手と呼ばれる騎手であれば或いは御す事も出来たかもしれないが、G1を制したばかり、ダービー初騎乗の若手ではそれも無理な話。結局玉砕ペースとなり、結果的に2番手につけたリーチザクラウンは実質単騎逃げの展開。それをロジユニヴァースがきっちりとマークし、アントニオバローズが前を固める。一方大外に追いやられたアンライバルドは、1角で中団に馬が上がろうとしていた所に岩田騎手が何故か手綱を引いてしまい首を何度も上げて折り合いを欠く始末。この馬場でこの展開、ここで早くも勝負は決した感があった。 後は4角で「ペースメーカー役」を終えたジョーカプチーノを交わし、前目にいた馬だけの叩きあい。リーチザクラウンをロジユニヴァースが交わして差を開いてゴールと呆気ない結末だった。
ロジユニヴァースは横山騎手をして「勝負になるとは思えなかった」と言わしめる状態。実際パドックでも腹回りが太くもう一絞りできる状態、陣営のコメント通りもう少し期間があればというように映った。尤も、陣営すら状態一息と言っていた訳で、まして素人にそれを慮るのはどだい無理な話だろう。しかし、天はこの馬を全て祝福するかのごとく、アンライバルドは大外に追いやられ、雨は降り続き、ジョーカプチーノは暴走、2番手以下先行集団は非常に楽な揉まれない展開に。これこそこの馬が望んでいた筋書きの全てであり、それが大一番に出るというのはまさに「運の強い馬」の典型だろう。とはいえ、泥んこ馬場を力強く抜け出した持ち前のパワーは最大限に評価すべきだろう。この結果がイコール実力を示すとは到底思えないが、兎も角3歳路線においてトップグループに復帰した事は間違いない。 リーチザクラウンも幸運の恩恵を受けた馬の一頭。皐月賞のように厳しいもまれる展開では力が出せないが、今回のような緩く揉まれないかつスローな展開では、きさらぎ賞でのパフォーマンスのように力は発揮できる。皐月賞のようにマークされる立場になれば弱いが、今回のようにマークが無い状態ならば注意する必要が在るだろう。 アントニオバローズもスムーズに先行できたことが全て。ベタ爪で重馬場は向くという話があったが、それがもろに発揮された形になった。 今後の事を考えると、中団から脚を伸ばした4着ナカヤマフェスタの内容は評価されていい。重馬場は向かないように思えたが、それでも掲示板にのったということは実力の表れ。秋が非常に楽しみな存在だ。 最後にアンライバルド。跳びが大きく、重馬場が向かなかったことは確かだが、岩田騎手の言う「スタミナ切れ」とは、1角で自身が手綱を引いた事が大きく作用したということは、私が改めて指摘するまでも無いだろう。京都2歳Sにおいてピンチヒッターの川田騎手が犯したミスを、まさか主戦騎手が一番大事な舞台で犯してしまうとは馬券を買った立場として言葉も出ない。名手のものとはとても思えない凡ミスを、大事な舞台でしてしまった。ダービーで1番人気を背負った馬が2桁着順になったのはサッカーボーイが敗れた1988年以来の珍事、勿論18頭立てとなってからは初だ。父に加え兄も勝利したここは、適性としては皐月賞以上に向くと思えた舞台だったが……競馬とは難しいものだ。
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