|| 倫敦納豆 11/10/24 (月)01:37
三冠の菊か逆転の菊か、それとも飛躍の菊なのか。オルフェーヴルの三冠がかかった菊花賞は、ダービー時点の有力馬で戦線離脱したのはクレスコグランドくらいで、比較的多くの馬が順調に夏を越したと思われる。夏以降で大幅に序列を上げてきたのはフレールジャックとフェイトフルウォー。人気を確認すると、オルフェーヴル(1.4倍)、ウインバリアシオン(7.8倍)とここまでが10倍以内、以下トーセンラー(12.2倍)、フェイトフルウォー(17.1倍)、フレールジャック(17.6倍)と続いた。京都適性を評価されたかトーセンラーの評価が結構高い。 オルフェーヴルは不良馬場のダービーを勝った上に、神戸新聞杯は上がり32秒台の末脚を使って差して勝っている。三冠の期待と同時に、オルフェーヴルを倒すためにはどうすればよいのかにも注目が集まった。
12.7-12.2-12.0-12.0-11.7―12.3-12.7-12.6-12.4-12.1―12.9-12.1-11.5-11.6–12.0
スタートしてしばらくはサンビームが引っ張ったのだが、1周目の坂を下るあたりからフレールジャックが出てきてサンビームの外に並び、前へ出た。その後ろにロッカヴェラーノ、さらにダノンマックインとユニバーサルバンクがいる。その後ろの外にサダムパテック、スーサングレードがいて、オルフェーヴル、フェイトフルウォー、トーセンラーはその後ろの集団にいる。馬群が切れて何頭か続き、ウインバリアシオンは最後方待機だった。初めの1000mは60:6と、菊花賞にしては速いペースである。 1周目のゴール板を過ぎたあたりで馬群が凝縮するが、このあたりでフレールジャックが引っ張る形でレースが進む。長距離戦の中盤にしてはペースが緩まず、しかも馬群は長くならない。全体的に前を欲しがる流れになっているのだ。しかも向正面の残り1500m地点あたりで、ロッカヴェラーノがペースを上げて先頭を奪う。フレールジャックとサダムパテックがこれについていき3頭で集団となる。ここでベルシャザールが、そして3角の坂でオルフェーヴルとトーセンラーが外から動き始めたが、ウインバリアシオンは内を通って順位を上げようとする。 4角を回るころにはオルフェーヴルは既に4番手あたりまで進出していた。内回りとの合流点ではもう先頭に立っている。トーセンラーがこれに続くがオルフェーヴルに追いつく感じではない。さらに後ろからウインバリアシオンが伸びてくるがこれも2着まで。オルフェーヴルは最後を流したため着差は2馬身半まで詰まったが、余裕の勝利で三冠馬となった。勝ちタイムは3:02:8でレースレコードより0.1秒遅かったので、追っていれば記録更新していただろう。
このレースを、敗者ウインバリアシオンの視点で語ってみたい。オルフェーヴルは前走スローの上り勝負を圧倒的な末脚で完勝した。だからそういう戦いでは勝ち目は薄い。ならば前にいて大きくリードを奪って逃げ切る方法が考えられる。しかし他の馬も同じことを考えていればレース全体のペースが上がり、かえって不利になる。それに、オルフェーヴルが指をくわえてリードを許してくれるのか? ここで逆の発想になる。自分が先行しなくても、どうせ何頭かがリードを狙って速い流れ・早仕掛けになりそうだし、オルフェーヴルもそれを放置はできないだろう。それなら自分はさらに後ろから行って、もしオルフェーヴルが先にバテるようならこれを抜き去る作戦で行った方が望みがある。 おそらく安藤勝騎手の考えはこういうことであり、実際に読み通りに速い流れになった。オルフェーヴルも早目に前へ進出した。彼は敗因としてウインバリアシオン自身が4角で進出しきれなかったことを挙げたが、それは外を回さなかった以上はやむを得ないし、むしろ内を回った割にはあまり他馬に邪魔を受けずに走れたと思う。作戦としては完璧に近い。 だがオルフェーヴルはバテなかった。またウインバリアシオンも最後方待機策をとるなら最後にもう少し伸びてほしかったとも思う。戦前はウインバリアシオンの方がより長距離向きではないかとの評価も多かったのだが、距離が伸びて得をしたのはオルフェーヴルの方だった、というのが私の結論である。
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