|| 倫敦納豆 11/12/06 (火)02:00
日本競馬の平地最長距離の戦い、ステイヤーズSである。諸外国と比べればまだまだとは言われるものの、日本競馬も短距離化が進んでいる。もはや3600mはキワモノ扱いである。だがそれゆえに、条件馬や近走不振の馬でも条件に合ってさえいれば勝ってもおかしくない。それゆえに条件馬まで集まってフルゲートにはなった。逆に最強馬クラスであっても条件不向きなら惨敗の可能性があるゆえ、他のレースで稼ぐ自信がある馬はこんなレースにはなかなかやってこない。 人気はビートブラック(2.7倍)、ナムラクレセント(5.5倍)、フォゲッタブル(5.8倍)、マイネルキッツ(8.2倍)、ビッグウィーク(10.5倍)、イグアス(12.7倍)、ヤングアットハート(14.3倍)の順。
12.4-11.5-12.7―12.2-12.2-13.6-13.5-13.3―13.6-13.4-13.3-13.2-12.9―12.6-12.9-12.4-11.9-13.2
スタートからレースを引っ張るのはドリームセーリング。鞍上の荻野騎手は一時期大逃げに凝っていたのだが、今回は馬群の先頭としての逃げである。ただしペースと不良馬場を考えると、荻野騎手は大逃げの形になることを内心期待していたが後ろがついてきてしまったのかもしれない。ビッグウィークとネコパンチ、その後ろをフォゲッタブルとゴールデンハインドが追い、その後ろが少し開く。 前半1000mが1:01:0と状況を考えれば速いペースなのだが、ここからペースは13秒台半ばに落ちる。どうも全体的に騎手の目は前へ行っていたようで、ペースダウンとともに後方も追いついてきて馬群は短くなった。あと1周のあたりでマイネルアワグラスが上がってくる。2周目、残り1200m地点で、ゴールデンハインド、マイネルアワグラス、ナムラクレセント、イグアスらが上がっていき、メイショウクオリアはやや後退。 ここでその後ろからマイネルキッツがじわじわと上がり、ビッグウィークがずるずる落ちていく。最後方にいたトウカイトリックも最内を活かして上がっていく。マイネルキッツはそのまま仕掛け、残り600mで先頭に立った。その後ろからナムラクレセントとイグアスが必死に先頭を追う。 直線入り口でマイネルキッツのリードは2馬身。2番手はイグアスで、ナムラクレセントは勢いで劣っている。イグアスは1馬身4分の1まで差を詰めたものの、マイネルキッツが押し切って勝った。最後の直線で追い込んだトウカイトリックとピエナファンタストが3、4着に上がった。
勝ちタイムは3:50:8だが、馬場差を考えればステイヤーズS史上屈指の好タイムだろう。それにしても、3角から仕掛け通しで4角先頭押し切りとは、長距離馬が距離不足を補うための走りである。最長距離のステイヤーズSで、しかも不良馬場なので切れ味勝負の心配が少ない状況なのにこの戦法を実行・成功させてしまうとは。鞍上の三浦騎手は前方で戦う傾向が強く、重賞では馬が早々に力尽きるケースが多かったのだが、そういう三浦騎手の勝負理念がこの馬にはプラスに出たようだ。 2着イグアスは1600万下だったがよい競馬を見せた。戦績を見ても長距離を得意としていることが示されている。3歳馬なので、この後の成長次第では春天の候補になれるか。6月のかきつばた賞(2400m)を2:26:5で走っていることを考えると、低速馬場限定ではなさそう。
今回のレース結果が今後のG1、例えば暮れの有馬記念につながるかと考えると疑問である。また、最長距離で不良馬場のレースを勝ったことが種牡馬候補としての評価をそれほど上げたとも思えない(逆に大敗しても種牡馬の評価はそれほど下がらなかっただろう)。もちろん賞金はあるものの、マイネルキッツにとって今回は特別な意味を持たないただのレースであり、ただの勝利である。 だが強かった。主観を挟んで恐縮だが、レースを見て楽しめたし、勝ち馬の戦いには胸を打たれるものがあった。
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