|| 倫敦納豆 12/03/19 (月)22:54
予想していませんでしたが、回顧させていただきます。
牡馬クラシック三冠に続いて有馬記念も制したオルフェーヴルの今年の初戦である。当然ながら断然の1番人気(1.1倍)であり、以下ヒルノダムール(9.5倍)、ギュスターヴクライ(13.4倍)となり、4番人気ジャガーメイルは30倍を超えていた。12頭立てと出走馬が少なく、逃げ馬がいなかったことから、展開はスローとの予想が大半だったが、それを見越して誰かが大逃げをすると考える人もいた。
(ラップタイムはマラ男さんの文章をご参照下さい。なお、馬場は稍重です)
どちらかというとスタートの悪いオルフェーヴルだが、今回は五分かそれ以上に飛び出る。予想通り前半速くならなかったことと大外枠で前に壁を作れなかったこともあって、早くも3~4番手になる。まずこの時点での隊列は逃げたのがリッカロイヤル、続いてビートブラック、この次が内にギュスターヴクライ、外にオルフェーヴルである。 ここまでスローペースである。この後もスローが続くと見たか、1周目4角で8番手にいたナムラクレセントが前へ進出、先頭にまで躍り出る。ちょうどほぼ4F目の始まり(600m)に加速、終わり(800m)に先頭に立った、1F分での出来事である。ナムラクレセントの動きに刺激されたかはわからないが、1回目の直線でオルフェーヴルはナムラクレセントに次ぐ2番手まで出ていき、さらに先頭に迫っていく。 後から振り返って興味深いのはナムラクレセントのペースである。序盤が1F13秒台、ナムラクレセントが先頭に立って12秒台に上がったが、オルフェーヴルに迫られてからはペースを13秒台に落とし、先頭を明け渡す姿勢を見せている。オルフェーヴルも先頭に立ちたくなく、再びペースが落ちる。 向正面で2頭が先頭、続いてビートブラック、コスモヘレノス、リッカロイヤルの3頭。続いてギュスターヴクライ。さらにジャガーメイル、ヒルノダムールと続く。そしてついに、残り1200mでオルフェーヴルが単独で先頭に立つ。
ここから不可解な動きが起こる。池添騎手がペースを落とそうと思ったか3角で手綱を引くと、オルフェーヴルが過剰に反応して急減速する。私はこのレースをウインズで見ていたが、私を含め観客の多くが故障を予感した。 ところが後続の馬群が過ぎ去ると、オルフェーヴルは再びレースに戻る。この時点で9番手と離れた10番手である。4角で大外から猛然と追い上げ、直線に入るころには3~4番手までやってきた。
この間先頭を引っ張っていたのはナムラクレセント。直線に入っても粘って、いったん並ばれたジャガーメイルを抜かせなかった。だが残り250mで内からギュスターヴクライ、外からオルフェーヴルが抜け出る。最後の叩き合いはギュスターヴクライが制し、重賞初制覇となった。なおオルフェーヴルは最後の直線でヒルノダムールの進路を狭くして審議対象になっている(降着はなし)。
このレースの扱われ方に、大きく分けて二点の不満があった。 マラ男さんをも含めて批判して恐縮だが、一点目は3角での「逸走」について、馬の責任を中心に語られていることである。だが私が見る限り、騎手が手綱を引いたことが急減速のきっかけである。またパトロールビデオを見直すと、向正面で既にだいぶ外へ離れていて、急減速の際に外に向かった感じはない。その「向正面で大外」自体が気性難の結果の可能性もあるが、「逃げたくない池添騎手がわざと内を大きく開けて、他の馬が前へ行ってくれるように誘った」と考える方がより自然ではないだろうか。私は騎手の作戦ミスを重く取りたい。 もう一点は「馬が行ってしまう」のは欠点なのかという点である。どんなに遅いペースでも自分から抜け出そうとしないのが馬の美点として扱われることが多い。こういう性向を、肯定的にとるなら「折り合いが上手」なのだが、否定的に考えると後ろでしかレースができない訳で、「極端なスローペースにもわざわざ付き合わなければならない」、「大逃げの馬を捕えられないリスクを負う」ことにもなる。 ウインズ観戦者からも、「普通に押し切れば圧勝だったのに」という声が多く上がっていた(私を含め、ウインズ派がそういう人種なのかもしれないが)。似た立場のシンボリルドルフの日経賞も逃げ切りだった。凱旋門賞が大目標だとして、スローペースの場合に先頭に立つことが、悪い傾向だとは思えない。
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