エピソード:周囲の人間、動物との仲で
キンチェムの親友は猫だったそうです。いつもこの猫と一緒に転戦しました。グッドウッドカップに勝利した後、船から列車に移る際に猫が行方不明になったことがあり、その時は猫が見つかるまで2時間鳴き続けました。しかし猫が見つかると、
キンチェムはいつもと同じように列車に乗り込んだそうです。また、厩務員のフランキーとも非常に仲がよかったそうです。
キンチェムは列車で旅行するのが好きだったためいつも自ら進んで乗り込んでいたが、フランキーがそばにいることを確認した後で寝たそうです。フランキーの
キンチェムへの愛情を知ってか、フランキーが寒い中で何も掛けずに寝ていると、
キンチェムは自分の馬衣をフランキーに掛けました。その夜からフランキーが毛布を掛けていても
キンチェムは馬衣をフランキーに掛けたといわれています。フランキーはその後、フランキー・
キンチェムと名乗り、墓標にもその名が刻まれているため本名がわかっていないほどです。また、
キンチェムの死後フランキーは一生独身のままでいたといわれています。馬主のブラスコヴィッチは
キンチェムがレースに勝つと必ずその後に
キンチェムの頭絡に花を付けていましたが、たまたまあるレースの後にこれが遅くなってしまうと、
キンチェムは鞍をなかなか取らせようとしなかったといいいます。
キンチェムは自分になじんだ水しか飲まなかったため、遠征をするときはタピオセントマルトン牧場から水を持っていきました。しかしバーデン大賞に遠征した際に、
キンチェムは突然水を飲まなくなってしまい、3日間も飲まないでいましたが、ある井戸を見つけると、その井戸に止まって水を飲んだと言われています。それからこの井戸のことが「
キンチェムの井戸」と呼ばれるようになりました。
キンチェムの強さは多くの人の関心を集めました。オーストリア・ハンガリー帝国の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世もこの馬のファンだったことで知られています。
キンチェムがレースに勝つたびに、馬主のブラスコヴィッチを祝福していたといいます。なぜか
キンチェムはヒナギクが好きで、スタート地点で探すのが癖になっていました。